兵庫県ツキノワグマの狩猟再開 推定生息数に疑問あり2016-10-23 14:50

 兵庫県が1996年から禁止していたツキノワグマの狩猟を一部解除することを決めました。推定生息数が、絶滅の恐れの無いレベル800頭を上回る940頭に回復してきたため、11月15日から1か月間、140頭を捕殺することを計画しています。
 その推定生息数に疑問が出されています。以下疑問点です。
・そもそも環境省は個体群ごとの管理が必要と言っている。兵庫県には、近畿北部地域個体群(西側)と東中国地域個体群があるが、兵庫県は、両個体群の熊の行き来があることから一体とみなして、推計頭数940頭を求め、狩猟禁止解除という方針を出している。
・環境省では、個体群の成獣800頭以上で安定した個体群と言っているが、兵庫県の推計数値は幼獣も含んだもの。2015年度に危険だということで殺処分した頭数は計算に入っていない。
・統計学を使った応用経済学を教える日本福祉大学の山上教授は、大型哺乳類である熊の増加率が兵庫県の推計(約20%)にあるようなことになることはあり得ないと言っている。彼が、標識、再捕獲法を使って、独自に推計したところ、熊の生息数は200~300頭程度であり、400頭に満たないだろうと推計。
県の単年度の推計中央値を見てみると、単年度の最大の自然増加率は26.2%。
 (財)自然環境研究センター研究員である藤田正弘さんが作成した資料によると、熊の個体数の自然増加率は5%となっている。横浜国立大学の大学院生太田さんの論文では、5~7%。
・奥山では、広葉樹が増えず、下草が生えないところもあり、餌が少なく、結局、人里などに、熊が降りて来ることになる。目撃頭数で推計値を求めると、数値が過大になる。
・100歩譲って、今の想定が正しかったとしても、下限値では691頭の生息の可能性もある。成獣の下限値が800を超えれば、どうするのかという判断の方が、合理性が高く、より多くの人に納得が得られる。
・西日本では、原則、狩猟は禁止している。個体群毎の数値を丁寧に把握、管理すべきであり、近隣の自治体と対応も合わすべき。もう少し皆が納得する形での推計をすべきである。現段階で狩猟解禁は問題がある。
 
 人間に危害を加える熊は捕殺処分するしかありません。しかし、奥山も実のならない針葉樹が多く、道路やダム開発などで、生息地が減って行く中で、人里近くに出て来るようになったことを考えると、広葉樹中心の奥山に復元し、生息地を回復すれば、熊は奥山に帰って行きます。
 安易な捕殺ではなく人と動物が共存できる森の回復が望まれます。