【声明】 安倍政権の安保外交「戦略」は緊張と対立を拡大し国際的孤立をもたらす2014-01-25 12:07

 【声明】 安倍政権の安保外交「戦略」は緊張と対立を拡大し国際的孤立をもたらす
-真の平和とは無縁の危険な「積極的平和主義」と「国家安全保障戦略」-

2014年1月16日 緑の党グリーンズジャパン運営委員会

 安倍政権は昨年12月、特定秘密保護法を成立させたことに続き、「国家安全保障戦略」を公表しました。私たちはこれに対し、脅威と危機の感を強くします。

 「安全保障」とは本来、政治・経済・社会・文化・軍事など、多岐にわたる分野の内政及び外交からなる包括的な概念です。しかし、この「戦略」は、とりわけ中国や北朝鮮の脅威を強調し、「目標」として「必要な抑止力を強化」し、「我が国に直接脅威が及ぶことを防止」することを掲げ、主に軍事力強化を前面に押し出しています。その上で、「国家安全保障上の戦略的アプローチ」のひとつに掲げる「総合的な防衛体制の構築」では、「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」とまで言い切り、そのために「ミサイル防衛」などでの「米国との緊密な連携体制」を打ち出しています。
 安全保障の一分野でしかない軍事政策をその「目標」に据えて拡大強化するとともに、その重要な柱として米国の核抑止力に依存する社会を目指すという、狭窄で危険な思考がこの基本骨格です。本来必要な全方位的な外交を放棄し、米国の核軍事戦略を軸とする軍事バランスに基づいた安全保障外交政策は、冷戦期の時代遅れの発想であるばかりか、平和と共存を目指す未来への道を閉ざす危険な発想です。

 また、「戦略」は、「積極的平和主義」という言葉を幾度も用い、それを「国際協調」と同義であるかのように表現しています。しかし、「積極的平和」とは、戦争のない「消極的平和」から一歩踏み込んで、武力紛争の要因や背景となる貧困や抑圧、人権侵害などがない状態と定義される概念です。安倍政権の「積極的平和主義」は、こうした基本概念に対する無理解あるいは意図的なすり替えに基づくものであり、核依存と軍事化を進め、日本や北東アジア、ひいては世界の平和に重大な脅威をもたらすものです。

 さらに「戦略」では、「積極的」な外交で中国を包囲しようとする意図が示されています。しかし、中国との外交・経済関係を重視しているアメリカやアジア諸国との温度差を否定できず、むしろ独りよがりな期待でしかないと言えます。中国による防空識別圏問題での日本と関係国の対応の温度差を見ても、外交は単なる期待や独善的思い込みでは成り立たないことを認識しなければなりません。

 突如強行された靖国参拝も、安倍政権の外交・国際感覚の鈍感さを露わにしています。
日本の侵略戦争に大きな責任を有するA級戦犯が祀られている神社への参拝は、どのように言い繕っても国際的に受忍できないのは当然のことです。また、靖国神社は、明治以来、天皇のために闘った兵士だけを祀り、「賊軍」とされた藩の兵士や、空襲などで命を失った多くの一般市民は無視する一方で、日本軍に徴用された朝鮮や台湾の兵士を、遺族の意向を無視してまでも「天皇の赤子」として祀ってきました。戦争犠牲者への悲しみを共有するためではなく、「名誉ある戦死」として国家的に顕彰し、自国内外の兵士を天皇の軍隊として精神的に組織した靖国神社は、軍や戦争と一体の戦意高揚の装置でした。
 そうした施設への参拝を海外の人びとがどのように受け止めるか想像するのは容易です。「同盟国」であるはずのアメリカまでも公式に「失望」を表明し、国連事務総長も批判しました。国際的な孤立により、「安全保障」はむしろ脅かされ、安倍首相らは日本の責任者としての自覚を欠いていると言わなければなりません。

 また、「戦略」では武器輸出三原則を「見直し」、緩和する方向も打ち出されました。南スーダンPKO韓国軍への弾薬供与は、その一里塚として位置づけられうる、国の基本方針を揺るがすほどの大きな問題です。現地の深刻な状況が背景にあるとはいえ、国民的議論を必要とする重要問題であるにもかかわらず、国家安全保障会議(NCS)のたった4人の判断で決断されました。民主主義を形骸化させつつ軍事化に進むその方向は、第二次大戦へと向かっていった戦前の日本と同じ危険性をはらんでいます。

 今年度内にはこの「戦略」に基づく「基本法」が制定されようとしています。海外での軍事力展開や「集団的自衛権」行使に向けた環境整備、そして改憲へと既成事実を積み重ねようとする安倍政権の安保外交戦略は、その独善性のため、結果として国際的には孤立しています。しかし、自民党一強体制の中で、こうした路線が容易に実現され、日本のみならず周辺諸国の市民の命や暮らしが危険に晒されかねないという、危険な状況を私たちは目の前にしています。

 私たちは、国際的孤立ではなく諸国の市民との共生と連帯を、軍事力強化ではなく本来の意味での「積極的平和」構築を、強権や独裁ではなく草の根民主主義を、改憲ではなく憲法の理念の真の実現を求め、志を共有する勢力や国内外の市民とともに手を取り合い、声を出し行動していきます。

【談話】 名護市長選の結果を受けて2014-01-25 12:09

【談話】 名護市長選の結果を受けて

2014年1月22日 
緑の党グリーンズジャパン共同代表 中山均

 去る19日に投開票された名護市長選挙は、辺野古基地建設に反対する稲嶺進氏が当選しました。

 自民党政府はこれに先立ち、「2021年度まで毎年3000億の沖縄振興策」(注)をはじめ、さまざまな圧力で仲井間知事と自民党沖縄県本部を屈服させ、さらに選挙中には「名護振興資金500億円」(石破自民党幹事長)という露骨な誘導もおこなおうとしました。

 しかし、保革を超えた市民・県民が稲嶺氏を支援、自民党方針に反発する沖縄の公明党も自主投票で対応し、平和を求める国内外の世論が移設建設反対の声を後押ししました。選挙直前には、映画監督のオリバー・ストーン氏や哲学者・言語学者のノーム・チョムスキー氏など、米国やカナダなどの著名な文化人らによる「沖縄への新たな基地建設に反対し、平和と尊厳、人権、環境保護のために闘う県民を支持する」との声明も発表され、国際的にも注目が高まっていました。

 稲嶺氏の当選で、沖縄の基地強化や辺野古の貴重な自然破壊に対する市民・県民の明確な「ノー」の意思があらためて明らかになりました。
 この市長選の勝利は、オスプレイ配備や日米安保体制強化と軍事力拡大、特定秘密保護法などに対する沖縄と全国の反対運動の高まりの延長線にもあります。

 沖縄県内では、本年11月の知事選をはじめ、今後も各地で自治体選挙が予定されており、日米両政府はさらに強い圧力を加えてくるでしょう。しかし沖縄県民世論は、引き続き普天間基地の返還、県外・国外移設を求めており、アメリカや日本政府が沖縄をこれ以上、植民地や軍事戦略の駒のように扱うことは、日本国憲法やアメリカ独立宣言、世界人権宣言の理念にも反するものです。
 日米両政府は、やがて20年が経とうとするSACO合意(1996年)で確認された「普天間基地全面返還」をただちにかつ無条件で実現させるとともに、辺野古基地建設計画を撤回しなければなりません。

 また、沖縄の基地負担、差別や抑圧と分断の現実を受け止め、幾度も示される沖縄の民意と真摯に向き合い、国内外の平和のために確固とした意思をもって米国と交渉することのできる国へと政治を建て直して行くことが、私たちも含めた「本土」の市民の責務であると確信します。
 私たちは、沖縄をはじめ全国・世界の平和を求める人びととともに、基地の無い平和な沖縄と日本、対岸諸国との平和と安定・共存を目指し、声を発し、行動していきます。


注)「3000億円」は、実際には大田県知事時代の4700億円よりも少なく、2014年度分は那覇空港拡張や沖縄科学技術大学の大学院拡充など国の事業も含まれての額であり、真の「振興策」と言えるか疑問。